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プロジェクト紹介
少数精鋭で挑んだ海外税務プロジェクト
現地税務の壁をどう突破したのか
OUTLINE
今回取り上げるのは、海外発電所建設事業における海外税務に関するプロジェクト。タックスルーリング(※)の取得から初年度税務申告まで、プロフェッショナル職社員を中心とした4名がまさに探究心を発揮して成し遂げた本プロジェクトについて、メンバーの皆さんに全容を振り返ってもらいました。
※タックスルーリング(Tax Ruling):
特定の取引やビジネスを行う際、税務上の取り扱いを税務当局との間で予め取り決めること。このタックスルーリングを事前に取得することで、後日税務当局が申告内容を調査する際に追加で税金を納付するように指摘されるリスクをマネージすることができるメリットがある。

単体経理第二部
2005年入社
チームリーダー
経済学部出身
S.Y
単体経理第二部
2022年入社
プロフェッショナル
経済学部出身
N.K
単体経理第二部
2020年入社
フィナンシャルエキスパート
経営学部出身
K.N
単体経理第二部
キャリア採用2022年入社
サブリーダー
経営学部出身
K.T

― 本プロジェクトの概要を教えてください

N.K
住友商事が手掛ける海外での発電所建設事業において、現地税務上の取り扱いを検討するプロジェクトでした。過去には同国で簡易的な申告を行った実績があり、本案件も同様の対応となる予定でした。しかし現地税務当局への確認の結果、当初の想定と異なり、昨今の国際的な課税強化の流れを受けて本格的な法人税申告が必要となりました。
住友商事にとって最適な申告方法を検討するため、SFMは現地の会計税務の観点から適切なアドバイス・提案することを期待されていました。
その中で、本事業に関する現地税法等の規定に曖昧な点があったため、現地税務当局と協議してタックスルーリングの取得に向けて交渉を行い、適切な税金を納められるように努めました。

― 皆さんそれぞれの役割を教えてください

N.K
私は案件の主担当として、現地タックスコンサルタントからのアドバイスや問い合わせに対し、現地税法を確認しながら適切な返答を検討する役割を務めました。また、営業や経理他部署、主計部税務チームなど多くの関係者とコミュニケーションを取りながら具体的な申告方法を検討したり、実際に確定申告をするために営業と協力して申告資料を作成したりしました。

K.N
私は申告で提出が必要になる可能性のある確証の整備と確認、一覧表の作成を中心に取り組みました。経理として、提出する確証の妥当性を判断する必要もあったため、メンバーへの相談や営業とのコミュニケーションを頻繁に行いました。

K.T
私はサブリーダーとして、基本的にはプロジェクトの進捗管理を行い、実務を担当するN.Kさん、K.Nさんが円滑に業務を進められるよう、適宜アドバイスを行いました。また交渉の開始当初や重要局面では税務当局やタックスコンサルタントとの協議に参加し、他のメンバーとともに当社税コストの最適化のために連携して取り組みました。

S.Y
チームリーダーとして、メンバーの指揮・管理を担いました。他の3名が主体で本プロジェクトに取り組んでもらいましたが、必ずしも海外税務に関する経験が豊富なメンバーではなかったため、定期的に状況を把握し、メンバー全員で相談しながらプロジェクトを進めました。

―プロジェクトで苦労したことを教えてください

S.Y
冒頭で N.Kさんが話していた通り、当初は簡便的な方法で法人税を申告・納税することが可能な前提だったため、前提が変わり、本格的に法人税申告を行うことになった点が、最も苦労したと思います。
また、税制は国によって異なるため、現地の税制を理解するための調査や、現地税務当局との折衝も苦労しました。会社として適切に税金を納付することが大変重要で、過大に納税してしまうと、会社のキャッシュフローが悪化し企業価値を毀損しますので、前提が変わったとしても、最善の結果を出すためにメンバー全員がプロジェクトに取り組んでいました。私個人としても、海外駐在から日本に帰国したばかりでしたので、当初は状況を把握し整理することが大変でした。

N.K
現地税務当局との交渉にかなり苦労しました。プロジェクトが本格化したのは入社1年目の冬でしたが、当時は海外税務に携わった経験や基礎知識もない中、タックスルーリングに携わることになりました。
本プロジェクトの場合、納めるべき税金の算出方法や現地税務当局への提出資料など、申告方法を一から百まですべて決める必要がありましたが、日本の税法と現地の税法では異なる部分も多く、考え方も言語も異なる国を相手に、適切かつ当社の望ましい申告方法になるよう交渉するのは、1年目の自分にとって大変なことでした。

K.N
私はこのプロジェクトが既に進行している中でチームに加わりましたが、海外の申告案件ということもあり、知識や認識が乏しい中で検討し判断することがとても難しく感じました。自身で理解を深めながらも判断に悩んだ際は、メンバーや営業の方と会話し、教えていただきながら業務にあたりました。

K.T
現地に出張しタックスコンサルタントや税務当局と折衝した際、ある項目について当社主張が受け入れられず、納税額がかなり膨らみそうになる局面がありました。もちろん適切な納税は必要ですが、このままだとキャッシュフローを圧迫する可能性があったため、どうミニマイズするかを当チームが主導して検討・判断する必要がありました。このときに起こった、社内外の交渉にとても苦労した記憶があります。

―プロジェクトを振り返って感じることはありますか

N.K
1年目から貴重な経験ができたと感じています。はじめは営業の方とのコミュニケーションにも不慣れでしたが、長く交渉していく過程で本発電所建設案件の理解が深まったことや、現地税法について多くのことを調べ乏しかった税務知識を補えるようになったことで徐々に自信もつき、臆せず話せるようになりました。K.Tさんがお話ししたように、交渉の過程で納税額が膨らみそうな局面もありましたが、営業とコミュニケーションを密にして案件実態や税務当局との交渉状況をよく理解していたことで、当社の主張を裏付ける資料を提示したうえで税務当局と交渉することができ、結果として最適な税額となりました。

K.N
チームの皆さんにサポートしていただいたおかげで、やり切ることができました。当社は上下関係なくコミュニケーションが取りやすい環境ですが、人との繋がりを感じながら大きなプロジェクトに携われたことが、やりがいに繋がったと思います。

K.T
実務担当のN.Kさん、K.Nさんが我慢強く、そして粘り強く取り組んでくれたことが成功のポイントだったと思います。今回の交渉は局面ごとに方針が変わり二転三転することも多くありましたが、その度に2人は方針に対するエビデンスや確証を準備・調整してくれました。私自身、優秀なメンバーと一緒に取り組めたことがやりがいとなりました。

S.Y
SFMのような経理・財務業務専門会社が行うバックオフィスの仕事は、決められた業務を着実に実行するイメージを持たれやすいですが、今回のプロジェクトは決められたものが何かあるわけではなく、まさに困難に立ち向かい、より良い結果を作り出すことができた一例だったと思います。
1年以上に亘り現地税務当局やタックスコンサルタントと折衝し対応を行いました。困難にぶつかっても探求心を持ち続け、最後まで最善の結果を出すことを諦めない。その強い気持ちがメンバー全員にあったから、達成できたプロジェクトだったと思います。
本プロジェクトを通じ、これまでに蓄積し培ってきた経理の専門性を活かし、営業の支援をすることがSFMの重要な役割の1つであると、改めて実感しました。

~本プロジェクトに関わった、住友商事営業部担当者からのコメントをご紹介します~
住友商事営業部 担当者からの声
当該国では久しぶりのプロジェクトだったため、現地税務申告に備えて税制を確認し、申告方針を整理する必要がありました。SFMの方々には、現地タックスコンサルタントを起用してのタックスルーリング取得と初年度申告において、多大なる貢献をしていただきました。
具体的には、会計基準や税法に精通した「経理のプロ」の視点からのサポートによって、タックスルーリング取得に必要な交渉の加速、現地税制の確認や申告プロセスの明確化に尽力してもらいました。タックスコンサルタントとの面談にも現地まで出張して参加いただき、とても助かりました。
他にも、営業作成の申告書類がタックスコンサルタントの要求を満たしているかの確認・相談や、住友商事グループとしての回答が必要な書類における関係部署との窓口の請負・調整など、多方面で頼りにさせていただき、大変感謝しております。

―プロジェクトを通じて得た成果と、
今後の展望を教えてください

N.K
当初は現地での申告経験がありませんでしたが、現在は本プロジェクトで得た知識や経験を活かし、他国でも税務申告や税務調査対応をしています。
中でも1年目から主担当としてタックスルーリングに携われたことは貴重な経験でしたので、部内の他メンバーにも経験を共有するなど、現地税務知識の向上にも貢献できるよう努めています。
今後も現地の税務申告業務に積極的に取り組んでいきたいです。

K.N
本プロジェクトをきっかけに、引き続き現地税務申告を担当することになりました。各国の税務制度を理解していくと同時に、今まで以上に営業・経理の連携を意識し、高品質な経理サービスを提供していきたいです。
また、近年は当社でもAIを積極的に活用し業務の効率化・高度化を図っていますが、正確性の確認や疑問を調べ解決していく過程は人にしかできません。本プロジェクトにおいても、初めての対応など判断が難しいところは、なるべく細かく確認することを意識しました。
経理としての専門性を求められている以上、何事も鵜吞みにせず、探求心を持ってこの先も取り組んでいきたいと思います。

K.T
住友商事グループは本プロジェクト以外にも世界各国で税務申告を行っており、他国でのタックスルーリングやグループ内の適切な取引価格を検討する移転価格税制対応、進出国での税務調査対応など色々な案件で税務問題がイシューとなります。本プロジェクトで得た見識を今後の税務対応に活かして、高品質のサービスを住友商事に提供していきたいと考えています。

S.Y
本プロジェクトを通じて、とても貴重な経験を積むことができたため、本プロジェクトメンバーを中心に、2023年から海外税務担当ラインを部内に設置しました。SFM内にある知見を集約し、海外法人税申告・税務調査対応などについて、より付加価値の高いサービスを提供していきます。
また、今回のような難易度の高い案件を担える人材を今後も育てていきたいと考えています。

―学生の皆さんへのメッセージ

(S.Y) 変化の激しい世界において、変化に対応することは今後さらに重要になってくると思います。今回のプロジェクトでも想定と違うことが起きて、それを乗り越えることが求められました。仕事をしていると、多様なことを学び、吸収して、変化に対応していかないといけない場面は多いので、学生時代から様々なことに興味を持って取り組む癖をつけておくと良いかもしれません。そのような方と一緒に働けることを楽しみにしています。

(N.K) 経理の仕事は専門性が高く、入社してしばらく経った今でもわからないことが多いです。そのため、勉強し続ける姿勢や探求心が大切だと感じます。また、当社はバックオフィスとしては珍しく交渉ごとも多いので、諦めない気持ちや粘り強さが成長に繋がると思います。

(K.N) 当社での業務について、入社前の私は、経理事務処理が中心のイメージを持っていましたが、実際は経理内・営業とのコミュニケーションが必要となることも多く、さまざまな人との関わりがあります。社内外の人と連携して仕事に取り組める、魅力的な環境だと思います。

(K.T) 当社は一般的な経理財務部門としての出納業務や財務諸表を作成するような経理事務作業を高品質で行うことは当然のこととして、国際的な税務/会計問題への対応やデジタル技術を駆使した業務改善プロジェクトにも取り組めるので、事務処理だけではない経理のプロフェッショナルになれる会社だということを伝えたいです。OJT環境や研修制度は整っているので、自律的に行動すれば、色々と貴重な経験を積めると思います。